マイナンバーと分散管理について
マイナンバー制度の導入に当たり、個人のプライバシーに与える影響が懸念されています。
これに対し政府は、マイナンバーは分散管理を行うので個人情報が一元的に管理されることはないと宣伝しています。
以下では、このマイナンバーの分散管理について解説します。
利用範囲が次々拡大するマイナンバー
平成28年1月から運用が開始されるマイナンバーは、運用開始当初は税・社会保障・災害対策に関係する個人情報のみ紐付けされます。
しかし、その後の法改正により、次々にマイナンバーに紐付けされる個人情報の範囲の拡大が予定されています。
例えば・・・
平成27年9月の法改正では、メタボ検診及び予防接種の履歴、預金口座のマイナンバーへの紐付けが決まりました。
その後も、戸籍、クレジットカード、パスポート、証券口座、固定資産等に関する個人情報への利用拡大が検討されています。
分散管理と一元管理
1つの番号に紐付けされる個人情報の量があまりに膨大なので、恐怖感を覚えます。
これに対し、政府は、マイナンバーは分散管理を行うと宣伝しています。
今まで各行政機関が保有していた個人情報はそのままその機関が管理し、マイナンバーを利用して必要な情報を必要な時にのみやり取りをするというものです。
分散管理方式は、
- 住民基本台帳や住民税に関する情報は市区町村に
- 所得税などの国税に関する情報は税務署に
- 年金に関する情報は日本年金機能に
- 健康保険に関する情報は健康保険組合等に
それぞれ分散して管理されます。
機関相互間の情報交換にマイナンバーが使用されるにすぎません。
分散管理の反対語としては、一元管理があります。
一元管理とは、マイナンバーに紐付けされるすべての個人情報を集積できる共通データベースを作成し、そのデータベースを用いて特定の機関がそれを一元的に管理するというものです。
個人情報の一元管理とは
マイナンバーに紐付けされた個人情報の一元管理を可能にする共通データベースが作成されれば・・・
例えば、
会社に就職を申込むと、会社が就職申込者にマイナンバーを提出させ、会社がそのマイナンバーを用いて共通データベースにより個人情報を調査し、その結果により就職の可否を決めるということも可能になります。
就職に限らず、金融機関からの融資を申し込むとき、生命保険契約を締結する時、アパートを借りる時など、個人の経済状況や健康状態その他の調査が必要になるケースは数多くあります。
その際、共通データベースがあれば、マイナンバーを用いて、それらの調査を容易に行うことができます。
分散管理方式は一元管理方式にいつ移行するか分からない
分散管理をすれば、確かに、個人のプライバシーに対する脅威は少なくなるかもしれません。
しかし、分散管理は、現在のマイナンバー制度が採用している方式ですので、いつ法改正があって、一元管理に変更されるかはわかりません。
技術的にも共通データベースの構築による一元化は可能であると考えられます。
マイナンバー制度の導入の目的は、税と社会保障制度の効率的な運用ですが、効率的運用を考えた場合には、共通データデータベースあったほうがよいに決まっています。
その為、共通データデータベース構築に進んでいくのは自然のことなのです。
共通データベースが構築されると、個人情報が流出した場合のプライバシーの侵害による被害や個人情報が行政機関によって自由自在に利用されるようになり、個人のプライバシーへの脅威が一層増します。