マイナンバー導入で不利益を受ける人〜小規模・零細企業〜
法律の施行や改正で新制度が度入されると、一定の方々が不利益を受けることがあります。
そこで、マイナンバー制度の導入については、どのような方々がどのような不利益を受けるのかについて、以下で解説します。
マイナンバー導入で不利益を受ける個人企業や零細企業
マイナンバー制度の導入で、不利益を受ける可能性があるのは、従業員を使用する個人事業主や零細企業です。
その理由は、従業員を使用する個人事業主や零細企業の中には、従業員の社会保険料を支払うと会社経営が苦しくなるので、社会保険の加入義務のある従業員をわざと社会保険に加入させないところもあります。
月額賃金10万円の方を1名雇うと、毎月約1万4千円程度、月額賃金30万円の方を1名雇うと、毎月4万5千円程度の社会保険料の事業主負担分が発生します。
よって、社会保険の加入義務のある方を加入させないと、違法なことですが、経費がだいぶ節約できます。
しかし、マイナンバー制度が導入されますと、税金と社会保険に関する情報連携がより効果的に行なわれることにより、加入基準を満たす従業員の社会保険への加入を怠っていた場合、行政機関がそれを簡単に発見し、加入するようにとの指導が行われやすくなります。
そうすると、加入義務のある従業員をわざと社会保険に加入させないで社会保険料の負担を避けていた企業も、社会保険料の支払いが必要となります。
そして、資金力の弱い企業の中には、社会保険料の負担に耐え切れないで廃業に追い込まれる企業も出てくるでしょう。
法改正でどのような変化があるか
平成23年に消防法の改正があり、ガソリンスタンドの地下タンクについて、設置後40年以上経過したものについては、2年以内に改修又は取替えが義務付けられました。
そのためには500万円程度の費用が必要で、この法改正により、負担に耐えられない小規模のガソリンスタンドの多くが廃業しました。
同様に、平成25年11月に施行された耐震促進法の改正により、昭和56年以降に建築された旅館やホテル等の大型施設では、耐震診断の実施とその結果の公表が義務付けられました。
その結果、耐震基準を満たさない旅館やホテルは、多額の費用を使って耐震工事を実施するか、耐震基準を満たさない宿泊施設地として公表されることによる宿泊客の大幅減少を甘受するかの選択を迫られました。
そして、資金力の弱い老舗旅館やホテルなどの多くが廃業に追い込まれました。
マイナンバー導入に対する零細企業等の対策について
社会保険の未加入問題に対し、行政機関がどのくらい熱心に指導をするかはわかりませんが、いずれにしても、社会保険の未加が発覚する可能性はマイナンバー制度の導入で高くなり、それに対する行政機関の指導の仕方によっては、多くの個人事業や零細企業が廃業する可能性があります。
また、個人事業主や零細企業の方が、マイナンバー制度の導入による不利益を避けるためには、従業員の勤務時間等を社会保険の加入基準を満たさないように調整するなどの、対策が求められるようになります。