マイナンバーとプライバシー権について
平成28年1月に運用が開始されたマイナンバーは、税や社会保障に関する一定の手続きがより簡便に行われるというメリットがありますが、半面、個人のプライバシー権に対する脅威が懸念されています。
そこで、以下では、マイナンバーとプライバシー権との関係について考えます。
本人の知らない間に個人情報のデータベースが構築され、流通する時代
プライバシー権とは、「自己に関する情報をコントロールする権利」と定義され、憲法13条に規定されている幸福追求権に含まれる憲法上の人権と考えられています。
しかし、マイナンバー制度が導入されると、このプライバシー権に対する脅威が一気に高まる可能性があります。
現在では、本人の知らない間に大量の個人情報が集積され、データベースが形成される時代となっています。
一つ一つの個人情報は、些細なものでも、それが大量に集積されると、個人の思想・信条、病歴や出自といった、他人に秘密にしておきたいような情報までが推測されるようになります。
現在は禁止されているデータマッチング
マイナンバーによるデータマッチングは、現在は違法と判断されています。
マイナンバーによるデータマッチングとは、各種の行政機関が縦割りで管理しているそれぞれの分野の個人情報を、1個のマイナンバーを用いて、同時にすべてを引き出すことです。
例えば・・・
政府の担当者が、端末にマイナンバーを入力すれば、そのマイナンバーの所有者のありとあらゆる個人情報が、すべて画面上に表示されるようにすることが、データマッチングの分かり易い例となります。
マイナンバーのマッチングを認めれば、1個のマイナンバーから、そのマイナンバーの所有者のあるとあらゆる個人情報が集積され、その方の、他人に秘密にしておきたいような情報までが推測されるようになり、個人のプライバシーに対する重大な侵害となります。
マイナンバー導入前から、本人の知らない間に大量の個人情報が集積され、データベース化されるという行為は行われておりました。
しかし、今回導入されたマイナンバーがこの目的のために利用されるとすると、そのデータベースの情報量は飛躍的に増大し、個人のプライバシー権の重大な脅威になることは間違いありません。
マイナンバーによるデータマッチングを禁止している最高裁解釈
幸い、現在のところ、マイナンバーの前身である住民基本台帳コードを利用したデータマッチングは憲法違反であるという最高裁判決(平成8年3月6日付)があるおかげで、マイナンバーを利用したデータマッチングはできないことになっています。
しかし、憲法解釈が変わり、憲法自体も変えられるかもしれないご時世ですから、住民基本台帳コードを違憲とした最高裁判決の解釈が変更になり、将来、マイナンバーのデータマッチングが合法化される可能性は十分にあります。
その際、マイナンバー制度が個人のプライバシー権を破壊し、集積された個人情報が国家による国民の管理に利用され、自由にものが言えない重苦しい社会を実現するための道具として利用されることは、十分に考えられます。