マイナンバーと労災年金、障害年金について
平成28年1月から運用を開始するマイナンバー制度は、税と社会保障に関する様々な分野に大きな影響を与えることが予測されています。
そこで、以下では、そのうちの1つとして、労災年金と障害年金の併給の調整にマイナンバーが与える影響について解説します。
マイナンバー導入前の労災年金と障害年金の併給調整について
マイナンバー制度導入前の労災保険の障害補償給付の受給申請書には、障害年金を受けることができる場合には、
- 障害年金の種類
- 支給開始年月日
- 年金証書の番号
- 障害等級
- 障害年金の金額
を記載する必要がありました。
なお、障害厚生年金の請求書にも、労災保険からの労災補償給付を受けることができる場合には、その給付の内容や給付を受けることができるようになった年月日等を記載することになっています。
障害補償年金の支払者は、障害補償年金の請求書の記載事項から、請求人が障害基礎年金や障害厚生年金の受給があるかどうかを確認し、その受給がある場合には、障害補償年金の併給の調整(一定割合の減額)を行ないます。
マイナンバー導入後の労災年金と障害年金の併給調整について
マイナンバー制度が導入されますと、労災保険の障害補償年金の請求書及び障害基礎年金・障害厚生年金の請求書にはマイナンバーの記載が行われるようになります。
すると、障害補償年金の支払者が、請求人が障害基礎年金や障害厚生年金を受給しているかどうかの確認を、マイナンバーを使って行うようになります。
マイナンバー導入前は、このことの確認は、障害補償年金の申請書上の障害厚生年金等の受給の有無に関する記載により、行われていました。
しかし、この方法では、申請者が、わざと又は知らなかったために、障害厚生年金等の受給の事実を記載しない可能性が否定できません。
しかし、マイナンバーを利用した行政機関間の情報交換により、申請者の障害厚生年金等の受給の事実を確認するようになると、申請書による確認と比較して、その事実の確認が明らかに正確に行なえるようになります。
労災保険からの障害補償年について
サラリーマンの方が、仕事中に発生した事故により、一定の要件を満たす障害者となったような場合には、労災保険から、障害補償年金が支給されます。
一方、労災保険からの障害年金の給付となった障害によって、今度は、厚生年金の方から、障害厚生年金を同時に受けることができる場合もあります。
労災保険からの障害補償年金は、原則として勤務時間中に、業務が原因の事故等で障害の状態になったこと等が支給の条件であり、一方の、障害厚生年金は、原則として、厚生年金の被保険者である期間中に、障害年金の原因となった事故による傷病ではじめて医者にかかった日(初診日)があること等が、受給の要件です。
労災年金と障害年金の併給調整について
労災保険からの障害補償給付も、厚生年金からの障害厚生年金も、互いに、一方の年金を受けていれば、他方の年金は受けられないという関係にはありません。
同一の障害の状態が、双方の年金の受給要件を満たしている場合には、両方の年金を同時に受けることができます。
ただし、その場合には、労災保険と厚生年金の双方の年金を同時にその全額を受給するとなると、保障が過剰になるということで、併給の調整が行われます。
その方法は、労災保険の障害補償年金と障害厚生年金を同時に受ける場合には、障害厚生年金が100%支給され、障害補償年金が17%減の83%の支給となります。
なお、障害の状態が一定の基準以上になると、障害厚生年金と障害基礎年金を同時に受けることができる場合もあります。
この場合には、障害厚生年金と障害基礎年金が100%支給され、障害補償年金が27%減額され73%の支給となります。