マイナンバーと相続税脱税について
平成28年1月から運用が開始するマイナンバーは、税と社会保障の様々な分野に大きな影響を与えることが予想されています。
そこで、以下では、マイナンバーが相続税の脱税防止に与える影響について考えてみます。
相続税の税務調査で申告漏れが発覚する確率は8割超です
平成25事務年度に行われた相続税の実地調査の件数は、11,909件です。
1年間に提出される相続税申告書は約50,000件と言われていますから、調査対象期間中に発生した相続のうち、5件につき1件の割合で相続税の税務調査が入ったことになります。
なお、同事務年度に行われた相続税の調査のうち、過少申告や無申告等の非違行為が発見された件数は9,809件で、非違割合は82.4%となっています。
よって、調査が入った件数のうち、8割を超える割合で、なんらかの税金の申告漏れがあったことになります。
相続税の申告漏れは現金や預貯金に関するものが多い
平成25事務年度の相続税の税務調査で申告漏れが発覚した相続財産の総額は、3,033億円です。
このうち、不動産が占める割合は15.8%で金額では478億円です。
また、有価証券が占める割合が、11.7%、金額ベースで375億円です。
そして、現金・預貯金が占める割合が39.2%、金額で1,189億円です。
相続財産というと、不動産が占める割合が高いのですが、相続税の申告漏れに関しては、不動産よりも、現金や預貯金の占める割合が高くなっています。
よって、税務調査の際に目を付けられるのは、不動産ではなく現金や預貯金の方です。
相続税の脱税に利用される隠し口座
さて、現金や預貯金のうちでも、特に相続税の脱税に利用されるのは、銀行の隠し口座です。
相続人が自分名義の隠し口座を保有し被相続人が口座に多額のお金を振り込んでおけば、相続財産を減らすことができるので相続税脱税が可能になります。
なお、相続開始直前に、被相続人の銀行口座から相続人の隠し口座にお金を振り込むと、口座履歴から脱税が発覚する可能性があります。
しかし、被相続人も隠し口座を開設し、その隠し口座から相続人の隠し口座に現金を振り込む方法を使えば、口座履歴を残さないで、送金ができます。
マイナンバーの導入で相続税の脱税が激減する可能性がある
マイナンバーが導入されると、将来的には、個人が保有する銀行口座がすべてマイナンバーに紐付けされるようになります。
すると、それまでは、税務署が個人の隠し口座を発見するためには大変な努力を費やしていましたが、マイナンバーの導入で、それが簡単にできるようになります。
相続税全体の脱税に大きなウェイトを占める隠し口座を利用した脱税が不可能になると、マイナンバーの導入により、相続税の脱税が大きく減少する可能性があります。