マイナンバーと社会保険〜未加入の場合〜
マインバー制度の導入によりクローズアップされるのが、社会保険の未加入問題です。
この問題は、今まで社会保険の適用逃れを行っていた企業にとっては、経営危機に直面する重大な問題です。
以下では、この問題について解説します。
マイナンバー制度の導入により社会保険の適用逃れが発覚し易くなる
マイナンバー制度が導入されますと、法人にも13桁の法人番号が付番されます。
この番号を使えば、当該法人の所得税の源泉徴収額の状況と、社会保険料の納付額の双方を、同時にかつ簡単に比較対照できるようになります。
また、その会社に勤める従業員の個人番号を使用して検索を行なえば、当該個人の所得税の源泉徴収額と、社会保険料の納付額を同時に把握できるようになります。
そうなると、例えば、源泉所得税に比べて、社会保険料が極端に少なかったり、0円だったりすると、社会保険料の未加入が疑われます。
社会保険の適用基準について
社会保険の加入義務は、長期雇用が前提のフルタイム労働者には当然に発生します。
また、パート労働者については、
フルタイム労働者の1月の所定労働日の3/4以上の労働日、かつ、フルタイム労働者の1週間又は1日の所定労働時間の3/4以上の所定労働時間の要件を満たした場合に、加入義務が生じます。
例えば・・・
【月給20万円の方の場合】
フルタイム労働者であることが当然予想されますが、この方の源泉所得税は被扶養者がいない場合には約4,800円となります。
よって、源泉所得税が4,800円であるにもかかわらず、社会保険料の支払いがないと、当然社会保険の未加入が疑われます。
厚生年金保険の加入枠の拡大について
なお、平成28年10月からは、厚生年金保険の加入枠が拡大し、月額賃金8.8万円以上の労働者の方が原則加入対象となります。
月額賃金8.8万円以上とは、毎月の給与からの源泉所得税の徴収が開始される金額です。
この加入枠の拡大は、当初は従業員規模501人以上の大企業が対象です。
しかし、いずれは中小企業にまで加入枠が拡大してくると予想されます。
そうすると、原則として、源泉徴収税がある方は、社会保険料の納付がある方となりますから会社が厚生年金保険の適用逃れをしていると、たちどころに判明するようになります。
社会保険料の2年間の遡及徴収で会社が廃業に追い込まれる
社会保険料の消滅時効は2年間です。
従って、社会保険料の未加入が指摘された場合、最大で2年間は遡って徴収されます。
仮に、月額賃金が9.8万円だとすると、平成27年度東京都の厚生年金保険料の事業主負担分は8,735円となります。
1年分で104,820円、2年分で209,640円分となります。
例えば・・・
厚生年金の加入枠が拡大後、月額賃金9.8万円のパート従業員10人に対して厚生年金の適用逃れを行っていた会社が、行政機関からそれを指摘されて上、過去2年間に遡って社会保険料の支払いを命じられた場合、その支払額は209,640円×10人ですから2,096,400円となります。
社会保険の適用逃れを行う会社は、ギリギリの経営状態のところが多いですから、突然200万円もの支払いを命じられると、たちまち経営難に陥ります。
よって、マイナンバー制度の導入により、社会保険の適用逃れに対する指導が強化されると、廃業に追い込まれる会社が数多く発生する可能性があります。