マイナンバーと所得税の脱税防止について
平成28年1月1日から運用が始まるマイナンバー制度は、税金と社会保障の分野に大きな影響を与えることが予想されています。
以下では、そのうちの1つとして、マイナンバー制度が所得税の脱税防止に与える影響について考えます。
平成28年のマイナンバーの導入の影響は限定的である
平成28年2月からはじまる確定申告の際には、確定申告書に納税者のマイナンバーの記載が義務付けられます。
ただし、現段階では主な所得税は源泉徴収によって徴収されており、確定申告の際にその所得を申告しなかった場合でも所得税の申告漏れということはあまり問題とはなりません。
平成28年時点でのマイナンバー制度の導入により、確かに税の徴収はより効率的になりかもしれませんが、脱税防止の観点からはマイナンバー制度の導入の影響は限定的だといえます。
所得税の源泉徴収とは
源泉徴収とは、給料や報酬を支払った時にその支払を行う者があらかじめ所得税を差し引いて上で、その残額を従業員等に支払うことをいいます。
例えば・・・
●給与:200,000円 ●給与に対する所得税額:20,000円 の場合
差額の180,000円を従業員に手渡すことをいいます。
会社の手元に残った天引きした20,000円については、会社が一定期日までに税務署に対して納めます。
よって、仮にこの給与を受けた者が確定申告の際、この給与収入を申告しなかった場合でも、所得税は給与からの天引きで既に支払っているので脱税にはならないことになっています。
影響が出てくるのは預金口座への紐つけが始まってから
マイナンバーの導入が所得税の脱税防止に影響を与えるのは、マイナンバーに預金口座の紐つけが始まってからです。
脱税をしようとする者は、隠し預金口座をよく利用します。
隠し口座に、様々な方法で獲得したお金を入金しておけば、確定申告の際に収入として計上する必要はありません。
確定申告の際に所得として申告しなければ所得税がかからないし、税務署に気づかれない限り脱税も発覚しません。
しかし、普通の口座に入金していると帳簿にあわない不自然な資金があれば、所得の申告漏れがすぐに発覚します。
マイナンバーに対する預金口座の紐つけが始まると、納税者が隠し口座を持つことが非常に難しくなります。
税務署は、簡単に納税者の持つ金融口座やその残高を把握できますので、不自然な資金があれば所得隠しを容易に発見できるようになります。
脱税に利用する預金の隠し口座が持てなくなる
脱税は隠し口座を非常によく利用します。
よって、今までは税務署の税務調査の際、帳簿に載っていない金融機関のカレンダーやメモ帳の有無が徹底して調べられました。
しかし、マイナンバーの預金口座の紐つけ後は、隠し口座があれば簡単に発見できます。
マイナンバーが所得税の脱税の防止に役立つとしたら、それは現在のマイナンバーではなく、預金口座に紐付けされた後のマイナンバーであるということができます。