マイナンバーが税に与える影響について
平成28年1月に導入されたマイナンバー制度は、税と社会保障の分野に大きな影響を与えることが予想されます。
そこで、以下では、その中の1つとして、マイナンバーが税制に与える影響について考えてみます。
マイナンバーが税の徴収に与える影響はそう大きくはない
現在の日本においては、主要な所得からは所得税が源泉徴収されています。
つまり、収入から所得税を差し引いた金額が支払われているわけであり、仮に確定申告や年末調整が行われなくても概算で所得税は徴収されているので、大きな問題は起こりません。
マイナンバーの導入によって、同一人物が複数の収入がある場合、収入の支払先から税務署に送付される複数の法定調書(源泉徴収票や報酬等の支払調書)が、同一人物のものであるという確認作業は容易になります。
このことにより、同一人物の総収入やそれから計算される合計所得金額の把握が簡単になります。
ただし、税の徴収に関しては、報酬等の支払い時に概算された所得税が源泉徴収されるという事実に変更はなく、マイナンバーの導入によって大きな変化はないと言えます。
マイナンバーが税の徴収に影響を与えるようになるのは、数年後に行われるマイナンバーの預金口座への紐つけが始まってからといえます。
マイナンバー導入で改良されるのは総収入や総所得の把握
マイナンバーが導入されると同一人物に属する複数の法定調書はマイナンバーで管理されます。
その為、特に年の途中で住所や氏名に変更があった方の法定調書については、変更前と変更後の氏名及び住所でそれぞれ作成された法定調書を同一人物のものであると確認する作業は極めて容易になります。
また、マイナンバーの提出時に本人確認を行いますから、偽名を使ったり、生年月日を誤魔化して、同一人物の法定調書を別人のもののように見せかけることで、総収入や合計所得金額をわざと低くするような不正行為もできなくなります。
それらにより、納税者の年間総収入や合計所得金額の把握はより正確に行われるようになると容易に想像できます。
年間総収入は、様々な社会保障関連の給付の認定要件に関わります。
また、合計所得金額は、様々な税法上の控除に関わってきます。
年間総収入や合計所得金額が行政機関に正確に把握されることにより、総収入や合計所得金額を誤魔化して社会保障関係の給付金や税法上の控除を不正に受給又は利用することが非常に困難になります。
マイナンバーへの預金口座への紐つけが行われる前の現時点でのマイナンバー導入の影響は、税金の徴収というよりも行政機関による総収入や総所得の正確は把握を可能にすることですので、
社会保障関係給付金や税法上の控除の不正利用を防止することにあると言えます。